[美術] スペクテイターとヘレン・シャルフベック - 魂のまなざし

3/08/2016

そういえば今日は国際女性デーだった
僕は昔からあまり雑誌を読んだりする習慣がないのだが、最近はなぜだか雑誌をよく手に取る。ここのところよく行く地元のカフェの雑誌セレクションが良いからだけかもしれないけど、世の中には意外に面白い雑誌があったりするものだと目新しい雑誌のページをパラパラとめくりながら今更ながら感心したりする。先日もたまたまSpectatorという雑誌を手に取ることがあって、なんだか面白そうな雑誌だなと勝手に感じ、その場でiPhoneからその時最も興味を引いたバックナンバーを取り寄せた。

その号の特集は「クリエイティブ文章術」というもので、ニュージャーナリズムやロックジャーナリズムと括られるノンフィクションの文章を紹介することを目的としている特集だった。未来の表現者に向けてともある。しかしながら「The Greatest Creative Writers Who's Who」と書かれたページを見て一気に読む気が失せてしまった。見開きの6ページを使って編集者がお勧めする偉大なる作家、漫画家が70数名ほど顔写真付きで紹介されているのだが、そのうち女性作家はたったの7人。これが2015年に発行された未来の表現者に向けた文章読本の価値観か!実際のところ世の中の多くの人はそんなこと気にしないのだろうし、僕が狭量なだけかもしれないのだけど、僕はそういった瑣末なことが気にかかる性分なんだな。

そんな小さなことで途方にくれていた僕が向かった先は、葉山にある神奈川県立近代美術館。そこでは「ヘレン・シャルフベック」という名の、どうやらフィンランドの国民的画家らしい人の回顧展が行なわれていた。最近、どこかでたまたまそのポスターを見かけた時からずっと気になっていたのだ。そう、そのポスターには「フィンランドを生きた女性作家の軌跡」とあり、あまり知名度もないであろう女性画家の展覧会なんて珍しいなと瞬時に感じたのだ。こうやって書き出してみると、なんだかヘレンに申し訳ない。

シャルフベックがヘルシンキに生まれたのは1862年。亡くなったのが1946年ということなので、2つの大戦を生き抜いた人生となる。幼い頃からデッサンの才能が認められ、18歳の時には奨学金をもらいフランスに留学することだ出来たというのだから、さぞかし才能に溢れていた人なのだろう。改めてヘレンには申し訳なくなる。僕はもともと美術にとても疎いし、北欧の女性たちが置かれた当時の状況などなおさら想像もつかないが、女性作家の作品にも正当な評価が与えられるような社会がすでにフィンランドにはあったのだろうか。女性の社会進出が未だに大きな課題である日本から見るとシャルフベックの当時の活躍も非常に眩しく映る。

初めて見るシャルフベックの作品は繊細な色使いでどことなく気品があり、悲しげな作品でさえも優雅な趣をまとっている。時代ごとに作風も大胆に変わり、あまり作品数は多くなかったけれど、とても見ごたえのある展示となっていた。展示されていた多くの作品はフィンランド国立アテネウム美術館より来ており、いつかアテネウム美術館を訪れてみたいと思わせる非常に良い展覧会だった。訪れた日はあいにく雨が降っていたが、美術館の面前に広がる春を待つ雨の葉山の海もとても美しかった。

東京、広島、仙台の後に続いた
葉山展は2016年3月27日まで開催とのこと




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