子連れ議員と日本の危機感
12/03/2017熊本市議会の女性議員が、議会に生後7ヶ月の赤ちゃんを連れていったことが少し前にメディアを賑わせていた。どうやら熊本市議会では、議員以外は議場に入ることは一切認めないというルールがあるらしい。
きちんとした手続きを踏まなかったことを問題視している人もいれば、議員がマスメディアを巻き込んでアクションを起こしたことに対して、賛同できないとする意見も散見された。もちろん、議会には子どもを連れていくなんてもってのほかだという人もいたし、逆の立場から、海外の例を参照して、子どもを職場に連れていくことを許可するようなサポートが必要と主張する人もいた。
どの社会においても、既存のルールや価値観など、そこにあることが当たり前として受け入られていることを変えるのは非常に労力を要する。ましてや「手続き」や「正しいやり方」にこだわる人が多い日本社会の場合、少しでも常軌を逸したと見なされるような行動に出てしまうと、逆に「賛成」「反対」の両勢力から叩かれてしまうこともある。
今回の騒動を「手続き論」や自分とは関係のない地方の1議会で起きた事件として片付けてしまうのは、この議員が個人のケースとして扱って欲しくないと訴えた「とても大切なこと」を見逃してしまうのではないだろうか。そして、その「大切なこと」とは、社会のルールやあり方に対して重要な議論がなされる議会といった場において、圧倒的に女性の数が少ないという事実が、多くの人にとって危機感を持って受け取られていないことだ。
世界経済フォーラムが作成した世界の男女格差ランキングにおいて、日本は144カ国中の114位に位置付けられている。このランキングは「経済」「教育」「保健・医療」「政治」の4分野において指標を作成し、それぞれの合算値を用いて各国をランクづけしている。
熊本市議会の議員の内訳を確認してみると、49人の議員のうち女性議員はわずが6人である。そもそも一人会派として活動する彼女が、議会の運営に関わることは難しい状況でもあったようだ。また、正しい手続きを踏まえて、議会に子どもを連れていくことへの理解や保育サポートを求めたとしても、他の議員が同じような価値観を持っていないのであれば、支援を獲得することは非常に難しいのであろう。同様に、議員を選ぶ有権者自体が、女性の政治参加に対して好ましく思っていない土地だとしたら、なおさら主張を通すことは大変なはずだ。
女性の社会進出に関する理解のなさは、熊本市に限らず日本全国に蔓延している。仮に「女性が輝く社会」の実現を目指しているのであれば、格差是正のためのあらゆる措置を国・地方自治体レベルで講じる必要がある。海外の女性企業家を支援する基金に拠出することもとても大切だとは思うけれど、国内に現存する男女格差に関しても、決して許されることではないという認識がもう少し広まってくれると嬉しい。
0 コメント