東京オリンピックと入国管理

9/24/2013


どうやら東京でのオリンピックの開催が決まったそうです!

ってちょっと遅いですね…

私自信はオリンピックそのものに興味がなく、正直どうでもよいとさえ思ってしまう。期待されている経済効果もそれ程のものではないだろうし、「若い人にスポーツの良さを伝えよう」といわれたところで、少子高齢化がますます進む日本でそのようなことを言われてもいまいちピンとこない。素直に祭りごととして楽しめればよいのだけれど、興味がないものに興味を持つのはやはり難しいものだ。

しかし、興味はないといったところで、無理矢理にでも興味をもてる分野を探そうとすれば必ずしも見つからないわけではない。もともとワールドカップなどの国際スポーツ競技における反レイシズムの取り組みに関しては、少し関心を持っていたこともあり、そういった観点からオリンピックを見直してみるというのは悪くはない。そういえば前回のロンドンオリンピックは確か「多様性・Diversity」を前面に押し出した大会だったとおぼろげに記憶している。最近のイギリスに関する移民関連のニュースをみる限り、オリンピックで讃えたDiversityの理念なんて、すっかり忘れさられてしまっているようだが、もしかしたら東京オリンピックの開催される2020年までには、オリンピック開催に向けて東京での社会的少数者に関する施策も少しは改善されるのかもしれない。クリーンな街をアピールするための「社会的排除」の方向に進まないといいのだけれども、きっと国際テロ対策とかの名目で外国人管理が強まったりするのだろうな。

そんなことを考えていて思い出したのが、約1ヶ月前に読売新聞で報道されていた日本の国際空港での自動化ゲート増設のニュースだ。(2013年8月28日付の記事だが、今は読売新聞のサイトには残っていない) この記事によると「観光立国」推進のために自動化ゲートの増設が必要であり、法務省がその予算請求額を増額しているとのことだが、記事の最後にはちょこんと「入国審査官130人の増員」も要求とあった。記事を読んだだけだと、自動化ゲートが増設するのになぜ入国審査官を増員しなくてはならないのか疑問が湧いてくると思うが、海外からの観光クルーズ客が増えているらしいので、恐らく海港に配置される審査官の数を増やしたいのだろう。空港での外国人入国管理の強化とも読み取れる不親切な記事である。

日本の入管は対応が甘いだとか、入国管理がきちんとなされていないだとか、入国管理局に対して不平をいう人は世の中には沢山いるが、実際には入管は彼/女らなりの「良い」仕事をしているのだと思う。法務省発表の資料によると、非正規滞在外国人の数が一番多かったのは1993年であり、当時、29万8646人が滞在資格を持たずに日本に滞在していたと算出されている。その後、非正規滞在外国人の数は減り続け、10年後の2003年には約22万人が残留していたとされ、さらに10年後の2013年には6万2千人まで減少した。ちなみにアメリカでは1400万人、EU圏では300万ー500万人の非正規滞在者がいると推定されていることを考えると、いかに日本においてはその数が少ないかが分かる。

日本社会に外国人が増えることを望まない人達は、「不法滞在外国人を取り締まれ!」、「入国管理をもっと厳しくしろ」と声高に叫ぶものだが、たかが6万2000人そこらの非正規滞在者の取り締まりをさらに厳しくしたところで社会が何か大きく変わるのだろうか。見た目が外国人っぽい人々に片っぱしから警察官が職務質問をし非正規滞在者を摘発していくといった原始的な手段はまさに「レイシズム」そのもので決して許されるべきことではないし、たかが6万2000人の数少ない非正規滞在者のために多数の警察官を動員するというのも税金の無駄遣いだろう。一方、法務省および入国管理局は自分たちの日々の努力をもっと社会にアピールするべきだろう。適切に移民の流入がコントロールされていることがもっと多くの人に知られれば、外国人や移民に対して不要な心配を抱く人も減り、一部の人々による外国人排斥の主張に耳を傾ける人も少なくなるはずだ。

オリンピックが開催される2020年には今よりもさらに日本の労働人口は減り、外国人労働者が増加していることが予測される。入管はいつの時代も「取り締まり強化」一辺倒で、そこいらの外国人排斥集団とあまり変わりがないが、せっかくお祭りごとであるオリンピックが開催されるのだから、日本在住の外国人コミュニティの声にも耳を傾けたもっとスマートな政策を打ち出してほしいものだ。


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